重度障害がある方が、親から離れてもHappyに暮らせる仕組みとは?
『障害がある子が生まれても、誰も絶望しない世の中に!』という想いを軸に、さまざまな活動をしている加藤さくらさん。笑顔が印象的な彼女に、障害と進行性の難病のある次女のマコさんとの日々や、活動を通して感じたこと。そして、今回の「問い」の背景を聞きました。

"障害がある子の、お母さんお父さんに「あなたのお子さんは、日々幸せそうに生きていますか?」と聞くと、100%「Yes!」と答える"
−色々な活動をされていますが、そのきっかけはなんでしょうか?
さくら:やっぱり、次女のマコですね。彼女には障害や進行性の難病があります。彼女がいなかったら、今こんな活動はできていないです。そして、彼女と暮らす中で、世の中には色んな不和があるなと思いました。それは大人の責任で、今は世の中の環境整備をしている感じです。
−活動している中で、気づいたことなどはありますか。
さくら:最近、私の周りの重度障害がある子の親御さんに、ヒアリングをしているんですけど、「あなたのお子さんは、日々幸せそうに生きていますか?」と聞くと、全員100%「Yes!」と答えるんですよ。この子たちは自家発電で幸せなんです。でも、親の方が勝手に絶望してしまうことがあるんです。私もそうでしたけど。
−さくらさんはどうやって、その絶望と向き合ったんですか。
さくら:やっぱり、未知のことって怖いじゃないですか。子育てって初めてのときは誰でも未知ですけど。特に障害や難病のことは「育児書」には載っていないわけですし。だから、娘より年上の障害がある子の親御さんにたくさん会いに行ったり、自分の中で納得する材料を集めていきました。でも同じ疾患を持っていたとしても、全く同じ子はいないということにも気づきました。何かのカテゴリーでは括られない、この子はこの子なんです。

"「普通」って大人が考えていること。「普通」とは違うことを社会がもっとウェルカムすることで調和に繋がって欲しい"
−なるほど。
さくら:自分が生きてきた人生とか、他の人が同じように踏んでいるステージをこの子は歩めないかもしれないと思うとすごく怖かったんですよね。この「普通」に対する自分や社会のこだわりについても不安になりました。
−「普通」へのこだわり…。親として自分も省みるところがあります。
さくら:もう一つ、親御さんたちにヒアリングしていて気づいたことなんですけど。障害がある子が生まれた時に、ほとんど「おめでとう」って言われないんですよ。やっぱり新しい命が生まれたら「おめでとう」って言われたいですよね。もちろん親が子どもの障害を受け入れる段階や、時間は人それぞれです。でも「おめでとう」という言葉はいつか必ずお守りになると思っているんです。
−「普通」とは違う一面に対して、社会が対応できてない点ですよね。
さくら:「普通」って大人が考えていることだから。大人が勝手に感じているズレですよね。障害ってそもそも大人の考える「普通」とはズレているので。それを社会がもっとウェルカムすることで調和に繋がって欲しいです。
"自分の子どもに必要なものがないと、親の自己肯定感も下がるんです"
−さくらさんの行っている活動について教えてください。
さくら:まず一つが、mogmog engineです。摂食嚥下障害がある子どもを持つ親たちがはじめたコミュニティ(親が気軽に悩み事などを吐き出す場)の「スナック都ろ美(とろみ)」 がスピンアウトして、2022年から摂食嚥下障害がある方や家族が一生食を楽しむための事業を展開しています。

−具体的にどんな事業をされているんですか?
さくら:例えば、株式会社スープストックトーキョーさんとコラボレーションして、咀嚼配慮食サービスを一緒に開発したりもしています。高齢者向けの介護食品は市場にたくさんあります。高齢者の誤嚥事故もニュースで見かけると思います。でも、子どもの摂食嚥下障害については、商品もほとんどなく、世間的に知られていません。自分の子どもに必要な商品がこの世に存在しないと、親の自己肯定感が下がりがちです。
−確かに。社会にウェルカムされていない気持ちになっちゃいますね。
さくら:はい。だからこそ、当事者で声をあげよう!作っていこう!と活動しています。親御さんの中にはペースト食でキャラ弁を作る、すご腕の方がいるんです。今までSNSでシェアすることを躊躇していたけれど、「えいや!」と発信したら「お食事をつくるのが楽しみになった!」と日々ペースト食を作る親御さんに喜ばれていて。情報が少ないからこそ、貴重なんです。なので、シェアを始めた親御さんはすごくイキイキされていますよ。人はやっぱり何かを提供できている、という価値を見出すと元気になりますよね。本当にコミュニティ運営は学びが多いです。
"リハビリって、子どもの意思関係なく大人が勝手に始めちゃうんですよ"
−デジリハの活動も興味深いのですが。
さくら:デジリハは、デジタルアートとセンサーを組み合わせた、新しいリハビリのかたちです。リハビリは、子どもの意思関係なく大人が勝手に始めちゃうんですよ。身体が拘縮してしまうのを、なるべく予防する狙いもあるので本人のためではあるのですが。でも、マコから「リハビリやりたい」って声は聞いたことがなかったんです。
−確かに。必要なことだからってやってね、となりがちですよね。
さくら:本人がやりたくないのに、やらせるのって拷問みたいじゃないですか。だから、やらないといけないことだったら、楽しいコンテンツを用意しなくてはいけないなと思って。デジリハはセンサーを活用しているので、子どもたちの動きに合わせることが可能です。既存のおもちゃはボタンを押すこと一つとっても、筋力がないと1人では遊べないものが多いので。デジタルアートを触ろうと、手を伸ばしたり、追いかけたり、夢中で遊んでいるうちにいつのまにかリハビリになっている。

"親亡き後に、重度障害がある子どもたちが幸せに暮らせる場所が欲しいですよね。じゃないと親は安心して成仏できないですから"
−すごい!ちなみに、すでに色々なアイデアを実装しているさくらさんが、今一番課題に感じていることは何でしょう?
さくら:やはり、親亡き後に重度障害がある子どもたちが、幸せに暮らせる場所が欲しいですよね。じゃないと親は安心して成仏できないですから。現状は、親や家族が一緒に暮らすことが前提で、社会側に受け入れ体制がほぼないんです。ずっと障害がある子の親が、子離れできない社会ってどうなんだろうと思います。子どもたちが親と離れた時にも楽しく、幸せに暮らせる場所が少ないことに課題を感じています。
−なるほど。
さくら:現状は、親の死後は障害者施設か病棟に入る感じですよね。しかも住み慣れた地域で受け入れ先がない場合は、離れた場所に行くという話をよく聞きます。施設入所は一つの解決策ではありますが、自宅で暮らしている時にはできる「あれ食べたい、ここ行きたい」という、ささいな個人の自由を妥協しなければならないのが懸念でもあります。「重度訪問介護」という制度を利用して、24時間ヘルパーをつけて一人暮らしをしている方もいますが、ヘルパーを確保するのが大変という話をよく聞きます。
−そういった課題に対して、すでに行われている取り組みなどはありますか?
さくら:例えば、Share金沢さんは、高齢者、大学生、病気の人、障害のある人が分け隔てなく手を携え、家族や仲間、社会に貢献できる街づくりをしています。他にも、札幌の社会福祉法人麦の子会さんの活動も素晴らしいです。けれど、まだ全国的な取り組みは少ないです。
"障害児がたくさんの人と関わり合える場が増えると嬉しいです"
−まだまだ少ないのですね。
さくら:はい。「重度障害」と聞くと、当事者に関係する人以外は、思考停止になってしまう方もいるかと思います。自分ごとになるのは難しいですよね。まずは、相互理解のためにも、障害がある子が、親や学校、病院の先生以外の大人、そして同じ年齢層の子どもたちと出逢う場が増えるといいなと思います。
−私の父は3ヶ国語話せるのに、リタイア後は暇をしていますので・・・。何かに役立ててほしいのですが。
さくら:すごい特技ですね!そういった個人の特技を通した交流も良いですね。そういえば、昔ホストクラブで仕事をしていた方が、重度の障害がある方とのコミュニケーションが得意だと気づいて福祉の仕事に就いた話を聞きました。
−えっ。どういうことなんでしょう。
さくら:ホストクラブなどの接客のプロの方たちは、お客さんの表情や仕草など、非言語的コミュニケーションを読みとる力に長けてる場合が多いそうです。重度障害があるなど、言語でのコミュニケーションよりも非言語的コミュニケーションを主とする方々との相性がいい。
−おぉ。様々な特技が、重度障害のある子どもとの交流に活かせるんですね!
さくら:はい。障害がある子どもの親だけの力では限界があります。重度の障害があっても、当たり前のように親離れができ、楽しく生活できる場があると心強いです。地域と、地域の多様な個人や企業の皆さんも一緒に、楽しく手をとり合えると嬉しいですね。重度障害のある子どもたちとの交流をきっかけに、地域に仲間ができたり、ご自身では認識していなかった素晴らしい特技を発見することにもつながるかもしれません。お互いが幸せに暮らせる未来を、一緒に考えていただけると嬉しいです。
重度障害がある方が、親から離れても幸せに暮らせるために。この問いに関心のあるみなさま、たくさんのアイデアをお待ちしています。
一般社団法人 mogmog engine
https://snack-toromi.com/news/1464/


