国籍関係なく、だれもが地域で仲良くなれるアイデアとは?
神奈川県横浜市鶴見区には、さまざまな人が暮らしています。ブラジルをはじめ、いろいろな国から移住し長年日本で暮らす人。外国籍だけれど、日本生まれ日本育ちの子どもたち。来日したばかりの外国人。しかし、日本で暮らす外国人は、仕事や学校、交友関係など、たくさんの課題に直面しています。だれもが日本で安心して生活できる「鶴見モデル」を実践しているNPO法人ABCジャパン理事長の安富祖さんと渡辺さんに、問いの背景を伺いました。

渡辺さん(左)と安富祖さん(右)
"ブラジルから日本に来て33年。自分が日本で子どもを育てる中で感じた課題を解決していきたい"
−安富祖さんは、2000年にABCジャパンを設立されたんですよね?その背景を教えてください。
安富祖:私は、ブラジル生まれのブラジル育ちですが、日本の生活はもう33年になりますね。最初は国際電話サービスやブラジルレストランなどの仕事をしていたのですが、同じブラジル出身の友人たちから病気の時、区役所での手続きの時や、育児・仕事のことなどの相談をよくきいていました。自分自身も感じていたことでしたが、外国人に悩みがあるのに、サポートや、そもそも居場所自体がないことを、すごく痛感していました。
−ご自身の原体験がABCの活動のきっかけなんですね。
安富祖:そうですね。特に、日本で働きながら自分が子どもを産み、育てる経験をする中で、言語の壁を中心に、地域コミュニティには入りきれないだけではなくて、そもそも行政の支援などの仕組みさえ知ることが難しく、困ることが多かったです。子どもが学校に行くようになってからも様々な壁を感じました。そんな中、同じ想いを抱いている仲間と一緒にボランティアでイベントなどをするようになったのが活動の原点ですね。
−どんなボランティア活動ですか?
安富祖:日本で暮らす外国人が、地域のコミュニティと接点を持てるようなイベントなどを、区役所と一緒に企画実施したりしていました。鶴見には多くの外国人が暮らしていますが、日本人と外国人が関わる機会は当時から少なかったです。「〇〇人」というカテゴリーを前提に接点を持つのではなくて、「人と人」が関わり合えるきっかけがとても大切だと思っています。
−そうですよね。「〇〇人」というバイアスから一人の人として接する以前に、誤解や偏見などがある場合もきっと多いですよね。

"リーマンショックがきっかけで、親御さんが仕事を失い、学校に行けなくなった外国人の子ども達のために、教育事業に力を入れるようになりました"
安富祖:もう何十年も日本に住んでいる人、日本で生まれた2世や3世の子ども等含め、みんな日本のために頑張っています。同じ日本で暮らし、日本を思う人同士が、「〇〇人」というカテゴリーを超えて、人としてお互いを理解しあえると嬉しいです。
−本当にそう思います。ちなみにですが、ABCさんは2006年にNPO法人化した後に、2009年から文化庁や、文部科学省の事業を受託し、様々な取り組みを展開されています。そのきっかけはなんだったのでしょうか?
渡辺:私は文部科学省の事業が始まるタイミングでABCに入ったのですが、2008年はリーマンショックでブラジル人学校に通っている子ども等の親御さんが仕事を失う方が多く、結果としてたくさんの子供たちが学校に行けなくなるということがありました。そこから、教育事業に力を入れ始めました。
−なるほど。でも、外国籍の子どもたちは日本の公立学校にも通えますよね。
渡辺:はい。ただ、様々な課題があります。まずは外国籍の子どもは公立学校に通っても言語の壁などで学校に馴染めず、偏見からのいじめもあったりして、通い難くなってしまう。そして、外国籍の子どもは義務教育の対象にはならないため、学校側も学校に来なくなっても、それ以上のことを把握するまではしないんですよね。
−そうなんですね…。
渡辺:親も共働きで、朝から夜まで働いている人が多いので、子どもが学校に行っていないことを把握するのが難しかったりもします。例えば、朝仕事に行く時に子どもと一緒に家を出ても、親と離れた後は、実際は学校に行き難くなっていて、学校には行かずに違う場所で過ごしていたりしていた、等の話はよく聞きます。
−なるほど。結果としてどのような課題が生まれるのですか。
渡辺:例えば、もちろん学ぶ機会をなくしてしまうので進学が難しくなったり、その結果、就職も難しくなってきてしまったり。あとは、昔であれば暴走族やヤクザなど、言葉が通じなくても最初は優しく接してくれるような人たちとの接点が増えてしまったり。
−課題がまた広がっていってしまうのですね。
渡辺:はい。なので、2009年から「ABCフリースクール」を開始して、母国で中学校を卒業して来日し、高校への進学を目指す子や、日本の学校に馴染めない子たちが日本語や、様々な教科を学べる居場所をつくりました。
−他にも、小学校内にも放課後教室を展開していますよね?
渡辺:はい。「小学校内放課後教室『つるみ〜にょ』」ですね!週に一回、小学校の図書室で開催している放課後学習支援教室です。こちらも2009年に開始しましたが、最近ではABCの「フリースクール」や「つるみ〜にょ」で学び、進学した先輩たちが手伝いにもきてくれたりするんですよ!

"地域によって、日本で暮らす外国人へのサポートの差があるのが現状。鶴見モデルを全国に展開できると嬉しい"
−それはとても嬉しいことですね!子どもたちも勇気づけられているのではないでしょうか。
安富祖:先輩の中には、横浜市役所で働いている子もいます。多くの先輩たちがそれぞれの意志で大学や専門学校に進学して、しっかり自立をしています。ABCの様々な活動もロールモデルとなる先輩たちのサポートもあり、サステイナブルにまわり始めているように思います。
−おぉ!地道な長い活動の結果ですね。ちなみに、他の地域でも同様のサポートは行われているのですか?
安富祖:実際は、住む地域によって日本に住む外国人の支援はとても差があります。少子化が進む一方、日本で暮らす外国人は増え続けていて、令和4年末には過去最高を更新していますし、肌感覚でも増えているなとも思っています。だからこそ、支援のあり方も早く考えないといけないと危機感を覚えますね。
−確かにそうですね。
安富祖:「〇〇人」というラベリングから、日本で暮らす外国人への誤解や無関心が生まれることで孤立する人が増えること、学ぶ機会を失う子ども達が増えることは、日本社会にとって良い結果を生みません。鶴見モデルが全国にも展開できたら素敵だなぁなんて思います。

"出身国は関係ない。人としていつも触れ合えばそれは日常になる。いつか「どこの国出身ですか?」と聞くことがなくなるような社会になるといいですね"
−本当に全国に広がって欲しいです!安富祖さんはブラジル出身ということで、日本でこんな誤解があったという具体的なエピソードはありますか?
安富祖:ありますよ〜。例えば「ブラジル人は服を着ているの?」なんてことも言われたりしました。アマゾンのイメージがあるからなんですかね(笑)あとは「ブラジルでは車は走っているの?」など。びっくりする誤解というか質問もありました。日本で暮らす外国人との交流は、いろんな文化に触れ合い、知り合えるチャンスでもあると思うんです。
−確かに!そんなチャンス逃したらもったいないですよね。
安富祖:そうです。だから、最近は小学校の体育館を月に二回借りて、外国人の親や子どもと、日本人の親と子どもが交流できる「ボクシングエクササイズ」なども企画して、人として、お互いがいつも触れ合えることが日常になるような場もつくっています。
−私も参加したいです!
安富祖:ぜひ参加してください!鶴見には多国籍な美味しいレストランもたくさんあるので、みなさんにきてもらいたいですね。今の日本には、外国人といっても、日本で生まれ育った2世や3世もとても多いです。大人も子どもも、日常の当たり前のふれあいを通して、「どこの国出身ですか?」というような質問が必要なくなるような、そんな社会になれると嬉しいなと思っています。
「出身国」や「国籍」というラベリングを超えて、日本人も外国人も住み心地のいい町や、社会、そして関係をつくるために、ぜひみなさんのアイデアをお待ちしています。



